養育費・婚姻費用の算定表/おかしい?

養育費・婚姻費用の算定表がおかしいと思われた方、その感覚は正しいと思います。私もおかしいと思います。

この記事は、いわゆる算定表がおかしいと思われる方に向けて書かれています。別居しているのに、婚姻費用を支払うのはおかしいと思われる方は、以下の記事をご参照ください。

算定表については、日弁連も平たく言えば、「おかしいから見直すべきだ」との意見を公表しています。日弁連の意見に関心のある方は以下をご参照ください。

日本弁護士連合会:「養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究」に対する意見書

ただ裁判実務では、基本的に算定表に従って決まることが多いです。そのため裁判(調停を含みます)では、基本的には算定表(またはその根拠となっている算定基準)に従いつつ、どの程度、修正することができるかという協議を重ねることになります。

養育費の場合、長期間にわたって支払われるものなので、月額1万円違えば、合計額ではかなりの違いになることもよくあります。支払期間が10年ある場合は、月額当たり1万円も違えば、合計額は120万円違ってきます。

上述しましたように、裁判では、基本的に算定表に従って決まってしまうことが多いですので、算定表で算出される金額では納得できないという方は、なるべく裁判になる前に、当事者間で協議し算定表で算出される金額とは違う金額で応じてもらえるよう相手方を説得しなければなりません。

相手方を説得する方法は、事案に応じて異なりますが、以下の2点は、どんな事案にも共通して言えることです。

その1 裁判では、双方に多大な負担がかかること

まず裁判(養育費や婚姻費用についての調停・審判)は、平日の所定の時間に原則として本人が裁判所に出頭する必要があります。しかも多くの場合一度だけ行けば終了ということはなく、何度も裁判所へ行く必要があります。さらにその都度、長時間、裁判所にいなければなりません。その半分以上の時間は待ち時間です。しかも待合室は、快適な場所ではありません。夏は暑く冬も快適な室温ではありません。ベンチシートなどが設置されていますが長時間、座るには適していません。

調停委員の態度や言葉に強い不満やストレスを感じる方もいらっしゃいます。

弁護士に委任すれば、このような負担の一部は緩和されますが、その場合、弁護士費用を負担しなければなりません。

特に養育費の調停・審判は、収入が多い方の親の収入のうち、子どもの養育のためにあてるための裁判手続きです。養育費の金額を定めるための費用は極力節約して、浮いたお金を子どもの養育のためにあてるべきです。

多少の金額の差を折り合うために、弁護士に委任して調停・審判手続きをとるということは、本末転倒となってしまうおそれがありますので、回避すべきです。お互いに譲歩して、当事者間で折り合いをつけることをお勧めします。

裁判離婚のデメリットについては、次の記事をご参照ください。

ただ相手方が一切話し合いに応じないなどの事情がある場合は裁判手続きを取ることもやむを得ないと思います。

その2 裁判では事案ごとの実情に応じた話し合いがしにくいこと

算定表・算定基準は、権利者と義務者の年収の額、及び子どもの人数、年齢のみで決まります。しかも年齢については、2グループのみ(14歳以下と15歳以上の2グループのみ)です。 上に書きましたように裁判実務では、基本的に算定表に従って決まることが多いです。そのため義務者の負担余力が大きく異なる場合(反対に権利者側が必要とする生活費に差がある場合)でも、支払う金額は同じとなってしまうという結果になります。

たとえば、夫婦(未成年者の両親)の一方が、自身の実家などに住んでいるために、住居関係費(家賃や住宅ローン、その他住居を確保するために必要な費用)が全くかかっていない場合と毎月安くない家賃等を支払っている場合とで、養育費、婚姻費用の金額は基本的に同じとなります。

義務者が毎月、家賃だけで10万円負担している場合と実家暮らしのために全く負担していない場合とで、収入および子の人数、年齢が同じである限り、算定表で支払うべきとされる養育費・婚姻費用の金額は基本的に同じということです。

上の2つの場合では、実際に義務者が1か月に養育費・婚姻費用にあてることができる金額には大きな差があると思いますが、そんなことは関係なく、算定基準または算定表で算出される養育費・婚姻費用の額は同じです。

これは明らかにおかしいです。

またよく問題となるのが、母親と子どもが居住している住宅のローンや家賃、その他の住居関係費を父親が支払っているというケースです。

上のケースのように、算定表通りでは明らかにおかしな結論となるような場合、調停で決めようとすると、調停成立まで(あるいは審判が出るまで)、一般的なケースよりさらに長期間を要する傾向にあると思います。

当事者間でよく協議して、実情に応じた金額で折り合いをつけられるよう双方努力するのが妥当です。

養育費・婚姻費用のメール相談

当事務所では、メール相談は、一般的には行っていませんが、養育費・婚姻費用の問題に関するご相談に限り、メールでご回答いたします。なお当事務所では、以前、無料メール相談に応じていましたが、取り扱いを終了させていただきました。

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以上

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