養育費について争いがある場合一日でも早く調停申立てすべき理由

一般論としては、養育費をめぐる争いを解決する方法として、調停を含む裁判手続の選択は、できる限り避けたほうが良いと思います。

調停は、平日の昼間、裁判所に出向いていく必要があり、しかも長時間、拘束されます。調停の手続き費用は高額ではありませんが、弁護士に依頼する場合は、安くない弁護士費用の負担を覚悟する必要があります。さらに申立てから調停成立まで、何か月もかかります。

この点については、離婚裁判のデメリットで詳しく説明していますので、ご参照ください。

ではなぜ養育費について争いがある場合一日でも早く調停申立てすべきなのでしょうか。

その理由は、養育費については、原則として遡って請求することができないから、ということになります(この記事は、養育費を請求する側の立場で記載しています)。

たとえば、養育費について父親と母親との間で6か月間話し合っても折り合いがつかず、結局、養育費を求める調停を申し立てることになった場合、申立てまでに経過した6か月間の養育費については遡って認められることは基本的にはありません。

その間、暫定的に適切な金額の養育費が支払われている場合は、問題はありません。しかし養育費が全く支払われていない場合や本来の金額よりも少ない金額しか支払われていない場合、調停を申し立てるまでの経過期間中の不足額については、養育費の支払いを受けることができなくなってしまいます。

反対に、調停を申立ててから、養育費についての家事審判確定までの間に1年経過した場合、申立時に遡って家事審判確定までの1年間分の養育費については遡って支払うことが命じられるのが通常です。このようなことを踏まえて調停で決める際も申立時まで遡って支払うことに合意することが多いと思います(調停の場合は、最終的に決めるのは当事者ですので、遡って支払うことまでは求めないということもありますが、その点については、権利者が自分の判断で決めることができます)。

このように話し合いを始めたときに遡って受け取ることができなくなってしまうということを回避するためには、一日でも早く調停申立てすべきということになります。

話し合いでまとまる見込みがあったとしても、取り敢えず申立てをしておくことをお勧めします。

調停は申立てをしても、実際に裁判が始まるまで、1か月以上かかりますし、東京では2か月先と言われることもあるようです。

調停の申し立てはいつでも取り下げることができますので、調停を申し立てておいて、裁判が始まるまでに、話し合いが折り合えば、申立てをても良いと思います。

因みに、養育費については、基本的には子が20歳になるまで支払い続けるものですので、約束通り最後まで支払うのか不安がある場合は、養育費の支払についての合意の内容について執行認諾文言付き公正証書としておくことをお勧めします。 執行認諾文言付き公正証書の作成例とその説明については以下の記事をご参照ください。

もっとも調停調書については、強制執行することができるという点で、執行認諾文言付き公正証書と同じですので、公正証書を作成する代わりに調停成立させるということでも良いと思います。

ただ公正証書の方が、拘束される時間が短いですし、日程変更についても柔軟に対応してくれます。なお公正証書については費用が別途かかります。詳細については、公証役場にご確認ください。

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